75.企業の災害対策-トイレ問題

2023/05/01

インフラがストップ・・・トイレが使えない!

トイレ 看板

自然災害がインフラを破壊する事例は過去にいくつもあります。その中でも特に“断水”は、水回りが使えなくなったり、トイレが流せなくなったりするだけではなく、わたしたちの体に思わぬ健康被害をもたらすことをご存知でしょうか?被災場所がもし自宅ではなく、勤務先などであれば、余計に緊張が高まってしまい、体にも悪い影響を与えかねません。
「トイレが使えなくなったらどうすればいいのか分からない!」ということにならないよう、このコラムで正しい知識と行動を身につけて、同じような状況に置かれても冷静に対処するようにしましょう。


災害時のトイレ問題は、どの場所でも深刻

トイレットペーパー

災害時に避けて通れない“トイレ問題”。多くの人が利用する避難所の仮設トイレは、臭いや汚れが溜まりやすく、下痢やおう吐、感染症の集団感染を引き起こす原因になることもあります。
オフィスビルのトイレでも、順番待ちの列ができていてすぐ利用できなかったり、落ち着いて用が足せなかったりと不便を感じることでしょう。

このような不便さがあると、できるだけトイレに行く回数を減らそうと水分や食事を控える人がいるかもしれません。しかしそういった行動は、脱水症状、エコノミークラス症候群、脳梗塞、心筋梗塞といった命を落とす病気の発症リスクを高めてしまいます。平時とは違い、簡単に病院で診てもらえない状況だからこそ、一人ひとりが命を守る行動を取る必要があるのです。

中には、「オフィスビルの水洗トイレなら、きれいだし数も多いから大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、オフィスビルのトイレの中には、断水していなくても、停電しただけで使えなくなるものがあることを覚えておいてください。
例えば最近人気の、便器の背後にタンクが無いタンクレストイレ。こちらは、水を貯めて流すのではなく、直結した水道の水を流す仕組みです。流す時は“電磁弁”を利用して排水し、排水する時以外には、水が流れないようせき止める構造になっています。
つまり、停電になるとタンクレストイレの電磁弁が使えなくなり、トイレが流せなくなってしまうのです。

記憶に新しい2018年の北海道胆振東部地震による停電は約43時間、2019年の台風15号による千葉県の停電は最大2週間にも及びました。停電が発生した原因にもよりますが、一度起こるとすぐには復旧しないものと覚悟しておく必要がありそうです。


水洗トイレは使わない方がいい?

様式トイレ イラスト 故障

そもそも停電や断水をしていなくても、災害時はトイレを使う前に排水管に損傷が無いか点検をする必要があります。排水管に異常がある場合や、異常があるかよく分からない場合は、水洗トイレの使用は控え、簡易トイレを使いましょう。
主なチェック項目は3点です。
・便器の下部や配管から水が漏れているか
・床下や天井裏から水が垂れる音がするか
・汚水の臭いがするか

なお、排水管が破損しているのに水を流してしまうと、1階のトイレから汚水があふれてしまうことがあります。絶対にやめましょう。

点検した結果、排水管に異常がない場合は、トイレに水を流して使うことができます。
洋式トイレであれば、バケツ1杯の水で排泄物を流し、小便はまとめて流します。
和式トイレは、排水レバーを押しながら、バケツ1杯の水を勢いよく流しましょう。
どちらのタイプでも、トイレットペーパーなどは詰まりの原因になるため、流さずにゴミとして処理します。

そして排水管に異常がある場合や、異常があるかよく分からない場合は、簡易トイレを使いましょう。
一般向けに流通している商品は、1人用や家族用といった少人数向けがほとんどで、1品で使用できる回数はそこまで多くありません。しかし、企業のように人数の多い場所での使用するのであれば、使用できる回数を重視して、簡易トイレセットを備蓄しておく必要があります。
水が流せなくなった既存トイレを活用すれば簡易トイレが作れますので、プライバシーにも極力配慮することができるでしょう。災害時の水洗トイレではできなかった、トイレットペーパーの使用と廃棄も一緒に行うことができますよ。


簡易トイレセット①
簡易トイレセット 災害備蓄品

▲画像クリックで商品ページへ▲

内容:トイレットペーパー200m巻4ロール(真空パック包装)、ポリ袋黒100枚、汚物保管袋青10枚、凝固剤500g×2袋(消臭剤入り)、スプーン2個


簡易トイレセット②
簡易トイレセット 災害対策 備蓄品

▲画像クリックで商品ページへ▲

内容:トイレットペーパー200m巻2ロール(真空パック包装)、ポリ袋黒100枚、汚物保管袋青10枚、凝固剤7g×100個(抗菌仕様)

<簡易トイレの作り方・使い方>
①既存トイレの便座を上げて、ポリ袋をかぶせる
②便座を下げて、用を足す
③便器の中に付属の凝固剤を入れる
④汚物保管袋に入れて廃棄する(汚物の処理は自治体の指示に従ってください)


簡易トイレの備蓄量は、5回(1日あたり)×7日間×従業員数が理想です。従業員数100人の企業であれば、5×7×100=3,500回分ですね。
ちなみに、簡易トイレの備蓄量が7日間なのは、インフラの復旧に時間がかかる恐れがあるからです。先程述べた通り、飲食を控える行為は大変危険ですので、我慢する人が出ないように、十分な備蓄を備えておきましょう。


トイレは“気持ちを切り替える場所”

見晴らしの良い湖畔

平時のトイレの役割は、用を足すだけはありません。気持ちを切り替える場所としての役割もあります。
当たり前にできていたことができなくなったり、周りの状況が把握できなくなったり、常に他の人と一緒に居続けたり、災害時は平時以上にストレスが溜まりやすい状況です。
そんな状況下で、数少ない1人になれる場所がトイレです。飲食を控えて重大な病を発症するリスクも、精神的に参ってしまうリスクも、トイレに行くことで幾分か解消できるのではないでしょうか。
そのためには、平時と同じようにトイレが“気持ちを切り替える場所”になれるよう、災害に備えて準備することが大切です。



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